頭上の枝にいくつもの卵塊ができていた。モリアオガエルが産卵の季節をむかえたのだ。すでに産卵のピークは過ぎていたようで、この日、目にすることが出来たのは4〜5組ほどのカップルだけであった。
モリアオガエルの繁殖地として国の天然記念物の指定を受けているのは、岩手県八幡平大場沼と福島県の平伏沼(へぶすぬま)の2ヶ所のみ。県によっては絶滅危惧種としてレッドリストに指定されている。
どんな動植物であっても、レッドリストに登録されてはじめて保護、保護と騒ぎはじめる。いつだって人の都合によって環境が壊され、彼ら自然の中で生きるものが犠牲になるのだ。
産卵に勤しむ彼らの姿を、僕は葉陰から気づかれないようにそっと見つめるのみである。